2-8. 「かぜ症候群」は予防が一番です!

監修: 岡部信彦 先生
(国立感染症研究所 感染症情報センター センター長)

予防には清潔と免疫力の維持が大切

人の多いところでは感染の危険性も高くなりますが、外出しないわけにはいきません。「インフルエンザ」を含む「かぜ症候群」は日常の健康管理である程度感染を防ぐことができ、また重症化も防ぐことができます。かかってから治療するより、予防することを第一に考えましょう。

「かぜ」の予防方法は「かぜ」をこじらせないための方法でもあります。

「かぜ」を予防する8つのポイント

手洗い

イラスト:手洗い
せっけんでウイルスや菌を洗い流す・洗ったあとは清潔な布、ペーパータオルなどで拭いてよく乾かす!

うがい

イラスト:うがい
口やのどを洗浄・タンなどを除去しやすくする・自浄作用の促進

水分補給

イラスト:水分補給
体内の水分バランスを整える・水分不足を補う

栄養

イラスト:栄養
バランスの取れた食事を摂る

睡眠

イラスト:睡眠
規則正しい生活と睡眠

リラックス

イラスト:リラックス
ストレスで抵抗力が低下・過労は禁物

保温

イラスト:保温
湯冷めは禁物・衣類・室温にも気をつける

保湿

イラスト:保湿
部屋の換気や加湿でのどの粘膜を保護・マスクは鼻やのどの保湿効果もある

ひいてしまったら、他の人にうつさない気遣いを

もしも「かぜ」や「インフルエンザ」にかかってしまったら、他の人にうつさないエチケットを心がけてください。

  • せきやくしゃみはハンカチや手で口と鼻をしっかり覆って飛沫をブロック
  • マスクで飛沫の拡散を防止しましょう(特に「インフルエンザ」)

  • 手をよく洗い・乾燥させて、接触感染を防ぎましょう(菌やウイルスは乾燥に弱い)

  • 「かぜ」をひいた人が使った食器類はきちんと洗いましょう(接触感染を防ぐ)

  • 無理をして出社や登校せずに、医師の診断と治療を受け、安静にして早く治しましょう
イラスト:エチケットについて

ポイントの詳細解説

手洗い

イラスト:手洗い

「かぜ」は手を介した接触感染でもうつります。「かぜ」の原因として多いライノウイルスは、手からの接触感染で鼻や目の粘膜を介してうつる特徴があり、予防のためには手を洗うことが大切です。

せっけんで手を洗うと、汚れといっしょにウイルスや菌が泡で洗い流されます。殺菌できているわけではないため、手に残ったウイルスや菌は生きています。手洗いは15秒以上、できれば30秒かけて液体せっけんなどでよく洗い、流水できれいに流しましょう。手をよく乾かさないでおくと、残ったウイルスや菌が付着したまま生き続けます。手を洗ったあとはよく乾かすか、清潔な布類、ペーパータオルなどできれいに拭きましょう。

「かぜ」をひいてしまったら…他の人へ自分の「かぜ」をうつさないために、くしゃみやせきでウイルスだらけの手をいつもよりもていねいに洗いましょう。

表2 手洗いによる細菌数の減少

手洗い時間
手に残っている細菌の減少量
15秒
1/4〜1/13
30秒
1/60〜1/630
小林寛伊 監訳, 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン, MCメディカ出版 矢野邦夫訳・編, CDC最新ガイドラインエッセンス集2, MCメディカ出版より改変

うがい

イラスト:うがい

「インフルエンザ」などは、せきやくしゃみからウイルスや細菌を含むしぶき(飛沫)を発生して、のどを通じて感染することがあります(飛沫感染、1〜2mの距離)。

うがいは「口やのどの洗浄」「タンなどの余分な有機物を取り除く」「のど粘膜の自浄作用の促進」などの効果があります。のどは空気や食物の通り道であり、清潔にして炎症がおこらないように粘膜の状態を整えておく必要があります。

水でうがいをしてものどを洗浄する効果は十分ありますが、「インフルエンザ」などの流行期にはうがい薬を使用すると、病原性細菌やウイルスを一時的に少なくする効果も加わります。ただしうがい薬はのどの粘膜を守っている常在菌も殺菌してしまうので、一日数回程度にしておきましょう。

表3 うがいによる口腔内の細菌量の変化(α-レンサ球菌)

生理食塩水でのうがい
のどの菌の数(個)
うがい前との比較

うがい前

290万個
-
うがい直後
75万個
1/4に減少
うがい一時間後
74万個
1/4を維持
藤森功,病原菌発育抑制α-レンサ球菌の口腔内定着状況と喫煙、含嗽の及ぼす口腔細菌叢への影響について、感染症学雑誌,1995;69,2:136改変

水分補給

イラスト:水分補給
人間の体は、半分以上が水分で占められています。体の中の水分が不足すると血液や体液が濃くなるため、さまざまな影響がでてきます。粘液によって外敵の侵入を防いでいる粘膜も、水分が不足すると十分な能力を発揮できず、ウイルスや細菌などに侵入されやすくなります。十分な水分補給はのどの粘膜(気道粘膜)の繊毛運動を活発にして、ウイルスや細菌の体外への排出を助けます。

「かぜ」をひいてしまった時の水分補給は特に重要です。発熱や下痢、嘔吐などによりいつもより水分が体外へ排出されることが多いため、脱水症状を起こしやすくなっています。

特に乳幼児や高齢者は脱水状態に陥りやすいので、十分な水分補給を心がけてあげましょう。


脱水症状について

体重の2%にあたる水分が失われると、「強いのどの渇き、食欲減退」などの症状が現れます(体重60kgの人で1.2リットル)。さらに脱水が進むと、危険な状態となります。

のどの渇きを感じたり、食欲が減退する程度(体重の4%程度までの脱水)では、水やスポーツドリンクを飲むことで回復できます。温かいものより、10℃前後の冷たいもののほうが、体への吸収が速くなります。

脱力感や眠気、頭痛などの症状がある場合(体重の4〜6%程度の脱水)は、医療機関で点滴による水分補給を受けたほうが、早く回復します。それ以上の脱水の場合には、医療機関で緊急の処置を受ける必要があります。

栄養

イラスト:栄養
日ごろから栄養バランスのとれた食事を摂ることは、「かぜ」の予防など健康を維持するために必要です。

ビタミンA(βカロテン):粘膜を強化して、病原微生物が入り込みにくくする(うなぎ、にんじん、モロヘイヤ、トマトなど)※脂溶性のため、体に貯まる傾向があるので摂りすぎないよう注意

ビタミンC:抗酸化作用を持ち、白血球の機能を高め、傷ついた細胞の修復を促進する。水溶性なので一日3回に分けて摂取するとよい。(アセロラ、イチゴ、ブロッコリーなど)

ビタミンE:抗酸化作用を持ち、ビタミンCの効果を持続させる働きもある。血行をよくし、細胞膜の保持、強化に役立つ(モロヘイヤ、うなぎ、さつまいもなど)

  • 野菜スープはビタミンを採りやすく体が温まるのでお薦めです。
  • ビタミンCとEはいっしょに摂取するとより効果的です。
  • 睡眠

    イラスト:睡眠
    疲労がたまると体の抵抗力も下がり「かぜ」を引きやすくなります。 睡眠不足などで不規則な生活を続けていると、疲れが取れずにたまって いきます。日頃からしっかり睡眠をとり、規則正しい生活をすることが 「かぜ」の予防にも大切です。

    また「かぜ」をひいてしまった時も、睡眠をとることはとても重要です。 かぜのひき始めは暖かくして睡眠を十分にとりましょう。

    リラックス

    イラスト:リラックス
    「病は気から」という諺もありますが、気持ちが落ち込むと「かぜ」を ひきやすくなるといわれています。精神的なストレスも同様です。 なるべくストレスをためないように、明るい気持ちを持ち続けることも 健康な生活を送るためには必要です。

    体調を崩してしまったときもリラックスして、なるべくゆったりした気持ちで 休養を取りましょう。

    保温

    イラスト:保温
    体を冷やすと「かぜ」をひきやすくなります。

    湯冷めや薄着で体を冷やさないように、冬季は衣類にも気を配り、 暖かい下着やセーター、靴下などを着用し、外出する時は上着や マフラーで体温を奪われないようにほどよくガードしましょう。 室温の調節も気を配り、寒すぎず、暑すぎず、快適な温度を保つ 工夫をしましょう。

    保湿

    イラスト:保湿
    粘膜を健康に保つことは、ウイルスや細菌の侵入を阻止する第一のバリアーです。粘膜は通常粘液によって守られ、水分が不足して乾燥すると大変もろく、病原微生物たちが侵入しやすい状態になります。冬は屋外でも、部屋の中も暖房などで乾燥し、のどの粘膜が弱ってしまう要因がたくさんあります。

    「のどが痛い」と思ったら、お茶などでのどに水分を与え、換気で空気を入れ替え、部屋の湿度を高くし、屋外ではマスクをしてのどを保湿することも効果的です。